日本では2018年10月から生活保護が引き下げられることが決定しました。引き下げ額は最大5%で、費用全体で1.8%減となるそうです。これは世界的な流れにも時代に逆行していると思います。
生活保護の基準は「最低限度の生活」ができるレベルとされます。最低賃金の基準は生活保護基準を上回らなければならないと決められていますので、生活保護基準が下がるとなると、最低賃金も上がらないばかりか、今後下がる可能性もあります。
ちなみに、ここ20年で賃金が上がっていないのは、先進各国の中で日本(とイタリア、メキシコ、ギリシャ)くらいです。
OECD websiteより
カナダのオンタリオ州では、2017年10月から生活保護にあたるOntario Worksが2%引き上げになりました。さらに生活保護支給の際の収入の控除額なども引き上げられるなど、少しずつですが、支給額は上がっています。
ちなみにOntario Worksはもともとの支給金額が低いという点があります。
支給額は家族の人数や子どもの数、年齢などで大きく違ってきますが、大人1人世帯の場合は700カナダドル(6万3千円)程度と金額は低く、特に家賃を含め物価の高い都市部では、これでは「最低限度の生活」もできないと言われています。
さて、カナダの最低賃金は、というと、2018年1月1日にカナダのオンタリオ州では最低時給が14カナダドルになりました。(1カナダドル=約85円、2018年2月18日時点)
これまでは11.60ドルだったので、なんと3.40ドルの大幅アップです。さらに2019年1月には15ドルになることが決定しています。
(筆者注:2019年1月現在、2018年6月の政権交代で自由党から保守党に政権が交代し、15ドルは中止、今後も14ドルで凍結されることが決まってしまいました…)
ちなみにバーなどで接客する人は、チップがもらえることが想定されているので最低賃金は12.20ドル(以前は10.10ドル)となっています。
最低賃金が大幅アップした背景には、物価の上昇があるのは明らかです。近年、カナダの特に大都市では家賃などがとても高くなっています。そのため、現在の最低賃金の所得では、正直、暮らせないというのが実情です。
そこで必要となるのが最低賃金で働く低所得者の収入の底上げです。企業に務める人の賃金アップを民間企業に任せていては、そもそも正社員待遇の人とそうでない人との格差は広がるばかりです。
最低賃金の大幅アップで懸念もあります。経営コストを抑えるために、労働者の人数が削減されたり、賃金がアップされたことにより、さらに物価が上昇するのではないかということです。
実際に最低賃金アップ後、雇用主側がコストを抑えるため採用を抑えたことにより、有効求人数が減ったそうです。さらにこれまで賃金を支給していた休憩時間を無給にしたり、福利厚生をカットするなどの措置を行っている会社が出てきています。これはあくまで法律で許された範囲内でやっていることなので、違法性は問えない場合が多いのですが、「非情だ!」「労働者いじめだ!」という批判が巻き起こり、あるコーヒーショップの前では、プラカードなどを掲げて抗議活動が起きました。
最低賃金で働く労働者は、非正規やパートタイムや有期雇用が多く、とても不安定な雇用形態です。最低賃金がアップしても、最低賃金で働く労働者の多くは、あやうい地位に立たされているのは変わりがないのです。