トロントらしい(?)老人ホーム

 

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 81 ソーシャルワーク・タイムズ vol.144

· 高齢者,移民

大学院の授業は2016年6月末に、論文は2016年8月末に終了していた私ですが、先日、やっと卒業が決まったという連絡がありました!トロント大学は1年に2回卒業式があって私は11月の卒業式に出席します。ガウンを着て、帽子を被るアレです(実際にはトロント大は学帽はありませんでした)。このメルマガのタイトルを考えなくては…です(結局タイトルは変えていません)。

さて、卒業に先駆けて、私は最近トロントにある老人ホームで仕事を始めました。「カナダ」にある「中国系」の高齢者施設の「日系人&日本人」向けフロアです。入所者の方もスタッフもほぼ全員が中国人です。私がほぼ唯一の日本人。

こんな特殊な環境は、多民族都市であるトロントならでは、でないかと思います(笑)。しかも中国系の高齢者施設はいわゆる特養のようなものだけでトロントに7,8箇所あるんです!

日本では今は、まだ考えられない状況ではないでしょうか。

さて、私が配属されているのが日系人&日本人のためのユニットなので、入所されている方には、英語と日本語を話す方(カナダ生まれの2世など)と、日本語のみの方(日本から来た方)、英語のみの方がいます。日系2世や3世の方はほぼ英語だけを使う方です。

介護スタッフと入居者の方は片言の日本語と英語で会話をしますが、入所されている方とのコミュニケーションは正直、大丈夫かしら??と思うこともあります。それに対しては日本語を話すボランティアさんや、日本語と英語を両方話す入所者の方が通訳するなど、色々と手助けしたりしています。

もともと現場が好きな私は、入居されている方からいろいろな話を聞けることが楽しいです。例えばカナダ生まれの2世の方々からは、第2次大戦中に日本人の収容キャンプに入れられたこと。家具を全部取られてしまったこと。戦後は、バンクーバーを追われて東側のトロントにきたこと。その頃、アジア人は差別されてきたこと。(キャンプにいた時のお友達と高齢者施設で60年ぶりに再会した、というケースもありました。)

日本から70年前に船でカナダに来たという方もいます。日本に来てからは、トロントで日本の文化を継承する活動を活発にしていた方。お子さんが先にカナダに来て、その後、呼ばれて来られたけど、言葉で苦労して…という方もいらっしゃいます。

日本出身の方は、やはり晩年は日本語の方が強くなるようで、お子さん、お孫さんとのコミュニケーションが難しくなる場合もあるようです。

「家に帰りたいなぁ」という方だけでなく「日本に帰りたい」という方もいらっしゃいます。「車で日本に帰れるかな?連れて帰って」と。

今、フロアの平均年齢は91歳を超えています。それぞれ長い人生のストーリーを、少しずつ聞けることを楽しみにしています。

ちなみに、このユニットでは日本風の食事が食べられます(毎食2種類から選ぶことができます)。日々の楽しみが少ない施設に入所されている高齢者のみなさんには、これがすごく大切なことなのですよね。お食事の時に、ご自身でふりかけや納豆を用意されている方もいらっしゃいます。

日本と比べて働き方などもいろいろな違いがあると思うので、今後ご紹介していけたらと思っています。