子どもの貧困対策基金と自立応援プロジェクトとUnited Way(1)

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.94 子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol.40

· 児童・教育

段々と寒い日が多くなってきたトロントです。最近は朝8時くらいまで暗いので、親子共々起きられなくて困っています。今週末に1時間ずれて冬時間になるので、少し緩和されないかと期待しているのですが、12月までまだまだ日が短くなるので無理かな…。

さて10月31日は待ちに待ったハロウィンです。仮装して近所を回りお菓子をもらいます。友人は「昔よりは近所を回る子どもも少なくなった気がする」と言っていました。比較的安全なカナダですが、やはり治安の問題なども影響しているようです。

この日は、子どもは学校に仮装をしていける日でもあります。子どもたちの通う学校では7、8年生が企画するダンスパーティー&お楽しみ会があるとか(仮装している人は入場料50セント、してない人は75セントと有料です)。

ただ、ハロウィンは宗教行事ではありませんが歴史上キリスト教と深いつながりがあると言われているので、多民族の集まるカナダでは宗教上の方針で参加しない子どもたちも多くいます。そのため、学校行事ではなく参加したい人がする有志のイベントという位置づけのようです。有志のイベントでも、授業時間に学校の施設を使えて参加したい子が参加できる、そういうカナダの許容範囲の広さというか、ゆるさがいいなと最近は感じ始めています。

さて先日、日本政府が子どもの貧困問題解決の為に寄付を求める基金「子供の未来応援基金」を発足したことが大きく報道されました。これは何年も前から子どもとひとり親家庭の貧困について活動し、声を上げてきた方々の成果とも言えるのではないでしょうか。

私はこのニュースを聞いた際、ついに「民間の企業と非営利団体」が大規模に貧困問題に対して行動しはじめる!すごい!と思ったのです(が....)。

このニュースを聞いたときに思い出したのが、カナダでたいへん良く聞く「United Way」という団体です。これは、大規模に寄付を募り助成金として分配する非営利組織です。この団体はカナダだけでなく、世界40カ国以上に渡る国際的な組織で、世界最大の非営利組織とも言われています(1887 年に、後の赤い羽根募金となる活動からスタートしたそうです)。United Wayの事業規模は世界で50億USドル(アメリカだけで39億ドル)、日本円にすると約6,000億円です。

子どもの貧困だけではなく、様々な社会的な課題や草の根の活動に対し助成を行っていて、各地区にある事務局が地域の活動に資金を分配しています。トロント市(人口260万人)だけで、241の団体と地域による834事業に約80億円が助成されています。

子どものための基金ができたと聞いて、このような民間組織ができたのかなと、想像したのですが現実には少し違いました。今回の基金は民間主導というよりは、政府主導であったためです。

ちなみに、この基金の運営を含めた事業の正式名称は「子どもの未来応援国民運動」というそうです(「一億総活躍」とか「国民運動」とか、全体主義を彷彿とさせる文言が頻出している今日この頃…)。
発起人には内閣総理大臣、文科省、厚労省の大臣、テレビ局(民法、NHK)、新聞社、経団連、企業、財団、大学職員、全国市長会、知事会会長、そして当事者団体が含まれています。

政府のこの動きに対し、国の責任を放棄しているのではないかと批判も聞かれました。本来、子どもの福祉の充実や貧困問題は、税金や福祉の再配分によって行うべきであるという意見です。逆に新しい動きとして期待するという声もあります。

この事業の全体像を見てみると、これが政府による「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」の一環であることが分かります(ちなみにこれとは別に「児童虐待防止対策強化プロジェクト」というのもあります)。

このプロジェクトの内容は大きく分けて次の6つ。
1.自治体のワンストップ窓口の整備(集中相談の整備)
2.生活を応援(子供の居場所作り)
3.学びを応援(子供の学習支援の充実)
4.仕事を応援(就職に有利な資格の取得支援)
5.住まいを応援(子育て世帯の住居の安定確保)
6.社会全体で応援 (子供の未来応援国民運動の展開、民間基金を核とした基金創設)

今回の基金は「6.社会全体で応援」に入るそうです。
次回、この自立支援プロジェクトの内容について考えてみたいと思います。