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「家賃が高い!」は福祉の問題か

家賃支払い拒否によるストライキ

子連れソーシャルワーク留学 in カナダ vol. 105 ソーシャルワーク・タイムズ vol.176

· AOP,貧困

2017年7月、涼しい日が続いていて7月とは思えないトロントです。先日、イギリスで高層集合住宅の大きな火事がありました。火が燃え広がる映像はショッキングなものでした。その集合住宅は自治体が管理する低所得者向けの公営住宅だったそうで、防火対策が不十分だったりスプリンクラーが作動しなかったこと、数年前に行われた外壁の修繕工事が不適切だったのではないか等の指摘があります。

公営住宅の適切な安全管理が必要ですし、住居は福祉の一部であることは間違いありません。

しかし「家賃が高い」ということは福祉の問題と言えるのでしょうか。適切な家賃の住宅を整備したり、提供したり、家賃を補助したりするのはどこまで行政の責任なのでしょうか。

トロントはとにかく家賃が高いです。車を持たない場合には、地下鉄やストリートカーの駅の近くで…と考えると、より高くなってしまいます。近年トロントでは人口増加や物価の上昇に伴い、家賃が上がっていて、急に家賃が2倍になったという事例もあって、ニュースになっていました。

オンタリオ州では1991年以前に建てられた建物の場合には、住民が住み続けている場合年間1.5%程度しか家賃を上げることができません。しかし、1991年以降に建てられた建物に対する家賃の規制はありませんでした。しかし2017年4月から1991年以降に建てられた建物についても2.5%までしか上げることができないという法律ができました。ただし、入居者が退去して次の入居者が入る場合や、特別に修繕を行った場合などは、この規定以上に上げることができます。

現在、家賃の値上げに対抗するために、住民が集団で家賃の支払いを拒否するストライキを行なっているところがあります。トロントにあるパークデール地区です。

パークデール地区は、トロントの中心部からほど近く、オシャレな地区のすぐ隣なのですが、比較的家賃が安く低所得の人、移民や難民としてカナダに来た人が多く住んでいることで有名な地区です。近年、この近辺でも再開発(ジェントリフィケーション)によって、地価が上がっていることが指摘されています。多国籍の不動産企業などがその地域の集合住宅を買収し、外壁やベランダを改修したことなどを理由に、家賃を大幅に値上げするということを行っているのです。

今回ストライキが行なわれている複数の建物を所有する企業側は、3年間で15%の値上げを行うことを表明しています。それに対し6棟の約200-300戸の住民が家賃の支払いを拒否してそれに抵抗しています。しかしストライキ開始から2ヶ月がたった今、支払いをしていない世帯には強制退去が執行される危険があるということです。

トロントでは市が運営するToronto Community Housing (TCHC) という組織が約6万戸の公営住宅を所有しており、約11万人が入居しています。これはトロント市の総人口の4%にあたります。ただし老朽化していることや、数がほとんど増えていないのにもかかわらず、約85,000世帯の待機者がいるということで、その数が大幅に不足していることが指摘されています。ちなみに東京の公営住宅は、東京の総戸数の約4%(26万戸)だそうです。

トロントでは生活保護の金額(1人世帯の場合700ドル程度)と比較しても家賃の相場は高く(ワンルームで$750くらいとも言われています)、生活保護を受給しながらもホームレス状態にある方(シェルターなどを含む)もいます(2013年のホームレス数は5,250人)。また家賃を払うと手元にお金が残らないため、フードバンクやコミュニティの炊き出しを利用する人もいます。

カナダでは最近では福祉サービスは「ハウジングファースト」が基本と言われています。人を支える時に、まず住居環境を整えることが、最優先であるということなのです。住むところがあって初めて、他の福祉サービスを使ったり、自立生活をするなど、生活全体を安定させることができるというのです。

安心して住むことのできる住環境を整えることは、安定した生活を営むことに直結します。それは社会全体の利益にもなるのではないでしょうか。安心して住むことのできる住宅の確保と供給。これが行政の役割でなければ、何が行政の役割だというのでしょうか、と私は思います。

 

2018年10月追記:パークデールの家賃ストライキは公的機関である「家主借主仲裁センター」が介入し、話し合いの結果、家賃の値上げが凍結されることになりました。住民側の勝ちでした!

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