私は、現在トロント市のいわゆる児童相談所(非営利民間組織)の付属研究所(Child Welfare Institute = CWI)で実習をしています(週3回)。児童相談所自体は職員が800人くらいいるのですが、この組織は職員のトレーニング部門、研究門と分かれていてとても人数が少ないです。事務スタッフが1人、トレーニング部門が2人、研究部門が3人(現在は2人)+実習生2、3人です。
研究部門では常時、組織内外の30ー40のプロジェクトに関する調査や評価を抱えているのですが、プロジェクトといっても、テーマやその規模も期間も本当に様々。
例えば「2週間後の理事会・役員会で使うので『組織の多様性と理事会の役割』に関するレポート(事例や先行研究)をまとめて」という緊急の依頼から、「5年間に渡る大学との共同研究プログラム」の一部として、カナダ全土の特定の児童福祉サービスを調べたり、過去のプロジェクトや文献を調べてレポートを書いたり。
また CWIでは、外部の非営利組織で行っているプロジェクトの評価も委託しています。若者向け自立プログラムの調査のためにグループインタビューを行ったり、回収した調査票をひたすらデータ解析用のソフトに入力したり…という日もあります。
学生は3ヶ月から6ヶ月の実習中に終わらないプロジェクトもたくさんあって、やっていることが氷山の一角ということも良くあります。
私が一番苦労しているのはレポートにまとめる部分です。英語の能力の問題もありますし、これまで書いてきた学術論文ではないので、読み手に合わせて、分かりやすく、ざっくりとしたまとめや、ビジュアルも求められるのでその塩梅が難しいなといつも思っています。
さて、何か大きいプロジェクトに取りかかっていると、フロアでその用語が飛び交うのですが、最近飛び交っている言葉は「FASD」です。日本語では「胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)」や「胎児性アルコール症候群(FAS)」と呼ぶそうです。
FASDは妊婦の飲酒でアルコールが胎盤を通過して、胎児に発育遅滞や器官形成不全などを生じること。出生前後の成長遅滞だけでなく、児童期以降の学習・衝動コントロール、対人関係障害などの症状や、後にADHDやうつ病などとの関連があることが分かってきています。
実はFASDに関して日本で調査が行われたのは25年前
の1990年だそうです。
今年、78年間続いた座高の測定を止めたそうです。理由は「意味がない」からだそうです(子どもの頃から、座高、胸囲とか意味ないよな~って思ってる人は多かったのでは?止めるの遅いですよね…)。
調査はデータを集めるのが目的ではなく、データを分析して活用するために行うべきです。それができていない調査に関しては、早くその扱いを再考した方がよいのかもしれません。なお、オンタリオ州では、学校での身体測定はありません。
次回はカナダでのFASDへの取り組みについてご紹介したいと思います。